彼が考えてくれた初夏の旅は、想像以上に素敵なことがいっぱいでした。
旅の始まりに“ふらのワイン”で乾杯。緊張の糸が、やさしくほどけたよ。
私たちにとっては初めての遠出デート。
ぎこちない空気は“くるる号”で向かった“ふらのワイン工場”で自然にほぐれていった。
ゆっくりと時を重ねて磨かれたワインを試飲。
「ワインの味には、その土地の土壌、地形、気候がそのまま表れるんだって。
そういう意味では、ここのワインは富良野そのものってことだね」と彼。
普段は、なかなか見ることのできないワインの製造工程や熟成庫の様子は貴重な体験だった。
花の香りに、とれたてのメロンに、こんなに感動するなんて。
富良野と美瑛を結ぶ国道237号線は、別名“花人街道”。
そう呼ばれるほどこのエリアには花畑が多く、短い北国の夏を鮮やかに彩っている。
世界観は息をのむほどスケールが大きく、
この景色が人の手で作られたかと思うと感動以外の何ものでもなかった。
花畑の近くには地元でとれた果物や野菜を提供しているお店も多い。
私たちは新鮮なメロンに歓声をあげ、メロンシェイクをゴクゴクと飲みながら、
目も舌も楽しませてくれる富良野の豊かさを感じていた。
世界で二人きりみたい。北星山森林公園でのひととき。
次に向かったのは “北星山森林公園”。
富良野はいわずと知れた観光地だから、
どこも多くの人で賑わっているのに、ここは別世界!
木漏れ日とそよ風が気持ちよく、鳥のさえずりが耳に心地いい。
五感が自然と開放されて、美しい自然を二人占めしているみたいだった。
森を抜けると視界が一気に開け、足元は一面ラベンダー畑!
いつのまにか“ラベンダー山”のてっぺんに立っていた。
「普通は、リフトで山頂に登って来るんだけど、
二人で森を歩けるルートを見つけたんだ」と彼。
あまり知られていない散策コースは、どんな物よりも嬉しいプレゼントだった。
眼下には田畑が続く富良野盆地。
大空の下には十勝岳連峰が堂々と姿を現していた。
大自然と人が作り出した富良野ならではの景色だと思った。
朝採り野菜がおいしさの決め手。夏しか食べられない、農家さんのカレー。
ランチは、地元の農家さんが経営するレストランで。
私たちは色とりどりの野菜がたくさん入ったカレーをチョイスした。
使用する野菜やお米はオーナーさんの畑から収穫しているそう。
この美しい街から色々なおいしさが育まれていると思うと、ますます味わい深く感じる。
「おいしいね」、二人してペロリと平らげたのはいうまでもない。
ガタンゴトンと揺られながら、ふたりの思いは続いていく。
富良野時計というものがあるとしたら、
それはきっと、ゆっくりと時を刻む時計に違いない。
すべてに癒されたかけがえのない時間。
ノスタルジックな雰囲気のノロッコ号から田園風景を見つめていると
「きれいだね、違う季節は、どんな眺めだろう」と彼。
今度はいつ来ようか…肩を並べながら次の旅に思いを馳せた。
取材協力
JR富良野駅「ふらのくるる号」乗り場 ふらのワイン工場 ファーム富田 とみたメロンハウス
北星山森林公園 北星山町営ラベンダー園 カレー工房きらら JRラベンダー畑駅 JR富良野ノロッコ号